NHK大河ドラマ その1(1963~1969年)

      2016/05/02

日本放送協会が昭和38(1963)年4月より日曜夜8時台45分枠で放送を開始し、平成28年現在に至るまで継続しているドラマシリーズ枠のことを一般的に「NHK大河ドラマ」と呼ぶ。第一作の「花の生涯」が始まった際、NHKは「大型時代劇」と呼んでいたが、二作、三作と続くと新聞等の他メディアがこのドラマを指して、原作となる大河小説と絡めて「大河ドラマ」と表記するようになり、後にこれが一般に定着してNHK自身もそのように表現するようになった。

 「NHK大河ドラマ」と呼ばれるドラマは、NHK自身がそのように決めているわけではないが、結果論的ではあるが下記のような類型を持つと考えられる。

 日曜夜8時より45分枠のドラマ
  ※ただし初期は開始時間が違い、また時間を拡大して放送することがあった。
 50話程度の1年間で一つのシリーズを区切る
  ※第一作及び平成5(1993)年からの歴史の裏三部作を除く。
 時代劇
  ※近現代三部作など例外あり
 一人の人物の生涯もしくは半生を追う
  ※多くの例外あり 

 物語のプロットとしては、歴史上の一人(非実在も含む)にスポットをあて、その生涯や半生を、周囲の者の動きや史実を取り交ぜ、長い放送期間を活かして丁寧に細かく描く、というものである。

 基本的には、いわゆる戦国の三英傑や幕末の志士と言った非常に有名な者が主人公であることが多いものの、一部には非実在の人物(「三姉妹」「獅子の時代」など)や、現在は知名度が無い人物(「春の波濤」「黄金の日日」など)が主人公となることもある。また、一人の人物ではなく、一族の帰趨を描くことからリレー形式で主人公が入れ替わるという形式が取られることもある(「草燃える」「炎立つ」など)。

 NHK大河ドラマは比較的テレビ草創期から始まったシリーズであるため、初期作品についてはその保存状況は概して芳しくない。NHK自身が全放送回所有している最も古いシリーズは昭和51年(1976)第14作の「風と雲と虹と」であり、全ての映像が残されているのは昭和53年(1978)第16作「黄金の日日」以降となる。

 本項目では、NHK大河ドラマの各シリーズについて下記の項目を記す。

放送年月日
シリーズ放送回数、最高視聴率、平均視聴率
主人公(演者)
主な題材
原作※存在する場合
脚本
音楽
主な出演者
語り

 花の生涯

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放送年月日 昭和38年(1963)年4月7日-12月29日
シリーズ放送回数 39回
最高視聴率/平均視聴率 32.3% / 20.2%
主人公(演者) 井伊直弼(二代目尾上松緑)
主な題材 大老井伊直弼の生涯を中心に幕末の世相を描く
原作※存在する場合 舟橋聖一「花の生涯」(毎日新聞)
脚本 北条誠
音楽 冨田勲
主な出演者 淡島千景、八千草薫、中村芝鶴、北村和夫、芦田伸介、仲谷昇、西村晃、田村正和、清水将夫、下條正巳、岩崎加根子、東恵美子、岡田眞澄、久米明、朝丘雪路、長門裕之、嵐寛寿郎、香川京子、佐田啓二
語り 小沢栄太郎

 概要

執筆中

 エピソード

・開始当時は20時からの枠は定まっておらず、本作も20:45~45分間の放送だった。本作の前番組はサスペンスドラマだった。

・3クール9か月の放送は、他には歴史の裏シリーズの後2作である「炎立つ」「花の乱」のみ。この2作はもともとは「琉球の風」同様に半年の放送となる予定だった。9か月の放送期間は第一作目故のものだったと考えられる。

・当時のテレビは映画より下に見られており技術的にも低かったため、テレビに映画スターは出ていなかった。しかし、佐田啓二を出演させるためプロデューサーの合田明が日参して説得し、いわゆる五社協定を初めて破って映画スターをテレビドラマに出演させることに成功した。これ以降、テレビに映画スターが出ることが事実上解禁となる。

・二代目松緑は、歌舞伎の興行に影響がないことを条件に役を受けた。しかしながら、そのために撮影が夜となり、必然的に翌朝まで徹夜ということもしばしばとなり、すわ降板かという事態にも発展した。

 赤穂浪士

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放送年月日 昭和39(1964)年1月5日 - 12月27日
シリーズ放送回数 52回
最高視聴率/平均視聴率 53% / 31.9%
主人公(演者) 大石内蔵助(長谷川一夫)
主な題材 赤穂浪士討入事件の経緯を内蔵助を中心に浪士たちの帰趨を描く
原作※存在する場合 大佛次郎「赤穂浪士」(東京日日新聞、改造社)
脚本 村上元三
音楽 芥川也寸志
主な出演者 淡島千景、林与一、尾上梅幸、滝沢修、志村喬、中村芝鶴、中村賀津雄、中村又五郎、田村高廣、岸田今日子、瑳峨三智子、伴淳三郎、芦田伸介、實川延若、坂東三津五郎、河津清三郎、西村晃、宇野重吉、山田五十鈴
語り 竹内三郎アナウンサー

 概要

・大佛次郎原作の本作が映像化されるのは本作以外で、映画4作、テレビドラマ3作がある。そのいずれもが原作と違い、大石内蔵助を主役として映像化している(原作の主役は堀田隼人で、架空の人物)。

・討ち入りの際に内蔵助が陣太鼓を打ち鳴らすイメージがあるが、本作では陣太鼓を使わなかったことは有名。そもそも、陣太鼓のシーンは忠臣蔵を世に知らしめた近松門左衛門「仮名手本忠臣蔵」にて書かれた創作であり、「山鹿流陣太鼓」なるものも近松の創作である。本作では時代考証としてなるべく史実に添おうとしたことが伺える。

 エピソード

・大河ドラマ史上最高視聴率である53%を叩きだした金字塔的作品。

・芥川也寸志による本作のテーマ曲は、実は映画「たけくらべ」(新東宝1955年)の使いまわし。しかしながら、本作の雰囲気と相俟ってか視聴者に強烈な印象を残した曲となった。50年以上を経た現在でも忠臣蔵を表現する際にこのテーマ曲が使用されることが多い。

・本作は前作同様20:45スタートだったが、4月より放送時間が変わり21:30~の放送となった。

・本作から土曜の再放送が始まり、現在も続いている。

・「大型時代劇」として企画された本シリーズは、実際には本作で終了の予定であった。

 太閤記

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放送年月日 昭和40(1965)年1月3日-12月26日
シリーズ放送回数 52回
最高視聴率/平均視聴率 39.7% / 31.2%
主人公(演者) 豊臣秀吉(緒形拳)
主な題材 妻ねねとの愛を中心に秀吉の一代記を描く
原作※存在する場合 吉川英治「新書太閤記」(読売新聞)、「続太閤記」(中京新聞ほか)
脚本 茂木草介
音楽 入野義朗
主な出演者 藤村志保、三田佳子、冨田浩太郎、田村正和、山茶花究、佐藤慶、川津祐介、福田善之、田村高廣、坪内ミキ子、石坂浩二、片岡秀太郎、片岡孝夫、土屋嘉男、御木本伸介、浜木綿子、乙羽信子、中村歌門、稲野和子、岸惠子、尾上菊蔵、フランキー堺、茂山七五三、佐野周二、島田正吾、浪花千栄子、石山健二郎、早川雪洲、高橋幸治
語り 平光淳之助アナウンサー

 概要

執筆中

 エピソード

・当時新国劇の若手だった緒方拳は急にNHKの担当者に呼ばれて「笑ってみろ」と言われた挙句、本人が承知しないままに主演に決まった。NHKの選択方法は若くて、猿に似てること、だった。

・本来前作で終わるはずだった大型時代劇は、本作にて若手中心でもう一作だけやろうという方針だったため、主な出演者は当時の若手が集まった。そのため緒方をはじめ、他の出演者も本作が出世作となった者が多い。

・若手中心でそろえた関係から予算が大幅に浮き、セットやロケに予算を投入できたため当時のテレビドラマとしては破格の映像を撮影することができた。

・吉田直哉演出による、物語に登場する舞台や建物などの解説シーンや、新幹線を登場させて説明するなどの斬新な手法が特徴だった。特に解説シーンから「社会科ドラマ」などと呼ばれた。

・本作の放送時間は20:15からとなり、これ以降大河ドラマが20時台の放送となった。

・「大河ドラマ」と一般的に呼ばれるようになったのは本作以降。

・テーマ曲がNHK交響楽団の演奏となったのは本作以降。これは前作のテーマ曲が好評で交響楽によるテーマ曲演奏がふさわしいと判断されたためである。

・本作は吉川英治の原作と異なり、天下統一後も描かれている。

・原作通りねねとのエピソードを中心に据えたため、淀殿は最終回に少しだけの登場となった。

・本作では織田信長を演じた高橋幸治に大変な人気が集まり、登場回を延長する事態となった。

 源義経

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放送年月日 昭和41(1966)年1月2日-12月25日
シリーズ放送回数 52回
最高視聴率/平均視聴率 32.5% / 23.5%
主人公(演者) 源義経(尾上菊之助(七代目尾上菊五郎))
主な題材 源義経の生涯を、義経と頼朝の確執を後白河院と源平合戦を交えながらその帰趨を描く
原作※存在する場合 村上元三「源義経」(朝日新聞)
脚本 村上元三
音楽 武満徹
主な出演者 緒形拳、藤純子、芥川比呂志、波野久里子、田中春男、内藤武敏、岩井半四郎、常田富士男、中村竹弥、大塚道子、山口崇、舟木一夫、市村竹之丞、辰巳柳太郎、渡辺美佐子、加東大介、山田五十鈴、滝沢修
語り 小沢寅三アナウンサー

 概要

執筆中

 エピソード

・義経の生涯を中心に据えているため、源平合戦のシーンは多くは描かれなかった。しかし壇ノ浦合戦などの表現では当時では難しい水中撮影なども駆使された。

・本作で初めて原作者と脚本家が同一の人物が起用された。村上の原作は本作のために書き下ろされたものではなく既刊の同名の作品を村上自身がテレビドラマ用に脚色しなおすという方式がとられた。

・本作主演の尾上菊之助は最年少23歳で主演を務めたが、この記録は奇しくも同一の題材を描いた平成17年「義経」で主演した滝沢秀明によって破られた。

・局方針としては前年の太閤記で「大型時代劇」シリーズは終了する予定だったが、好評につきシリーズを存続させることとなり、本作の開始を以て「大河ドラマ」は毎年恒例のシリーズとなった。

・世界的な現代音楽作曲家である武満徹の、唯一にして最後の大河ドラマ音楽担当となった。武満徹は本作において琵琶による作曲方法を見出し、有名な「ノヴェンバー・ステップス」へとつながった。

・有名な立ち往生を演じた緒方拳は前年に続く起用だったが、新人を一年で放り出すのは忍びない、という意図での起用だった。プロデューサー自身は三國連太郎を起用する予定だった。

 三姉妹

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放送年月日 昭和42(1967)年1月1日 - 12月24日
シリーズ放送回数 52回
最高視聴率/平均視聴率 27% / 19.1%
主人公(演者) むら(岡田茉莉子)るい(藤村志保)雪(栗原小巻)青江金五郎(山崎努)※いずれも架空人物
主な題材 幕末から明治維新にかけて三姉妹と、一人の浪人を中心に時代にほんろうされる周囲の群像を描く
原作※存在する場合 大佛次郎「逢魔の辻」(河出新書)「その人」(博文館)など
脚本 鈴木尚之
音楽 佐藤勝
主な出演者 芦田伸介、丹阿弥谷津子、志村喬、中村嘉津雄、井上孝雄、勝部演之、山口崇、御木本伸介、中村玉緒、米倉斉加年、内藤武敏、中村敦夫、鈴木瑞穂、瑳峨三智子、佐藤慶、西村晃、滝沢修
語り なし

 概要

・架空人物を主人公とした初のシリーズ。また群像劇を本格的に描いた初のシリーズでもある。

・大佛次郎の原作は自身の幕末から維新にかけての複数の著作から。主人公はタイトルの通り架空の三姉妹であるものの、三姉妹が出演しない放送回も多く、狂言回し的な立ち位置にある青江金五郎が実質的な主人公とも考えることもできる。金五郎は原作の一つである「逢魔の辻」の主人公。

・大佛は本作の原作をNHKから依頼された際に快諾したものの、ほかの仕事が入ってしまい結局本作用に書下ろしをすることは無かった。代わりに自身の作から原作を取ってよいと交換条件を出し、特に上記二作の幕末維新物を使用することを勧めた。ただし本作が原作に沿うのは15話まででそれ以降はほぼ脚本の鈴木によるものである。大佛と鈴木は本作開始前に物語のプロットをほぼ二人で作っており、大佛の意図は鈴木に受け継がれた。

・本作は回毎の副題が無い(第○回と表記される)。

 エピソード

・ナレーションが本作には無い(現在「新選組!」と本作二作のみ)。鈴木がナレーションなしの緊張感を得たい旨を主張し、その意図が受け入れられた。

・本作では三女役の栗原小巻に非常に人気が集まり、そのファンに「コマキスト」という言葉が生み出された。

・明治維新から100年ということで、それを題材にしたいというNHKの意向から本作となったが、視聴率は前作までのシリーズと比べて振るわなかった。「大河で維新モノは流行らない」という先駆となってしまった。

・本作は映像が前作同様ほとんど残されておらず、且つ原作があるとは言えオリジナル色が強い作品であるため、内容に不明の部分が多い。

・新聞紙上などで、題名と内容が一致しないという評価が相次いだ。実際、三姉妹がほとんど出演しない回も多く、青江がクローズアップされる展開だった。なお本作の題名をつけたのは大佛だった。

 竜馬がゆく

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放送年月日 昭和43(1968)年1月7日 - 12月29日
シリーズ放送回数 52回
最高視聴率/平均視聴率 22.9% / 14.5%
主人公(演者) 坂本竜馬(北大路欣也)
主な題材 坂本龍馬の一代記を司馬遼太郎の原作を基に描く。
原作※存在する場合 司馬遼太郎「竜馬がゆく」(産経新聞、文藝春秋)
脚本 水木洋子
音楽 間宮芳生
主な出演者 浅丘ルリ子、水谷良重、三田佳子、下川辰平、坪内ミキ子、左幸子、中尾彬、市川男女蔵、長谷川明男、夏八木勲、若柳菊、井川比佐志、前田吟、新克利、蜷川幸雄、土屋嘉男、橋爪功、東野孝彦、石田太郎、高橋昌也、尾上辰之助、津川雅彦、金子信雄、河津清三郎、加東大介、小林桂樹、森光子、森雅之、三木のり平、高橋英樹
語り 滝沢修

 概要

・現在における龍馬の一般的な映像イメージを作り出した作品と言える。司馬の原作が、ほぼ初めて坂本竜馬(原作表記)を一代記として纏め世にその存在を知らしめた作品であり、現在の龍馬の評価はこの作品無くしては語れない。

・本作の脚本は「ひめゆりの塔」「ここに泉あり」等で有名な水木洋子だったが、映画出身の水木が書く脚本はかなりテンポが速く、演出担当者を相当に悩ませた。

・前作に続いて回毎の副題無しだった。

 エピソード

・同一の時代から二年連続で題材を取った初のシリーズ。現在に至るまで完全に同一の時代から題材を連続で取り上げたことはない。「三姉妹」の項でも記述した通り明治維新から100年ということで維新物を題材としたが、次作についても維新物を継続してやるべきだという議論が局内で盛んにあり、最終的にそれが入れられた形が本作だった。

・シリーズ初の題材となる当地(高知)でのロケが行われた。

・北大路欣也は本作の役作りのために竜馬が免許皆伝であった北辰一刀流を習得した。

・本作が最後のモノクロ映像作品。

・現在は時代劇俳優のイメージがある高橋英樹は、本作が初めての時代劇出演だった。

・前年に続き視聴率が振るわず、平成6年「花の乱」が記録を更新するまで最低視聴率のシリーズだった。

  天と地と

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放送年月日 昭和44(1969)年1月5日-12月28日
シリーズ放送回数 52回
最高視聴率/平均視聴率 32.4% / 25.0%
主人公(演者) 上杉謙信(石坂浩二 少年時代:中村光輝)
主な題材 上杉謙信の生涯を宿敵である武田信玄との闘いを織り交ぜながら描く
原作※存在する場合 海音寺潮五郎「天と地と」(朝日新聞)
脚本 杉山義法ほか
音楽 冨田勲
主な出演者 樫山文枝、市村竹之丞、高松英郎、伊東四朗、山本耕一、河原崎建三、上月晃、山口崇、杉良太郎、梅野泰靖、米倉斉加年、長門裕之、藤村志保、あおい輝彦、浜畑賢吉、芥川比呂志、藤田まこと、志村喬、新珠三千代、有馬稲子、宇野重吉、滝沢修、高橋幸治
語り 中村允アナウンサー

 概要

・本作は12話から主役の石坂浩二が出演する事実上の主人公リレー形式となった初の作品。

   ・本作から副題が復活した。また平成28年「真田丸」が放送されるまで副題がオープニングの最後に表示される唯一の作品だった。

 エピソード

・本作からカラー映像となった。また4月から放送時間が20:00からに改められ、これが今日まで続くことになる。

   ・前作が視聴率不振で、二作不振作が続いたことから大河ドラマは本作が最後になる可能性が高かった。しかしながら、少年時代を演じた中村光輝(三代目中村又五郎)と教育役の高松英郎の演技や、後を受けた石坂浩二と、再び重要な助演役となった信玄役の高橋幸治が同様に好評となって好調な視聴率に繋がった。

   ・本作は初のカラー作品となったが、それだけに色をごまかすことができず、特に合戦シーンでは本物の甲冑を方々から集めるなど苦労が有った。また、ヘリによる空撮や大勢のエキストラを合戦シーンに動員するなど大規模なロケ撮影が行われた初のシリーズとなった。

その2へ続く

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