火山の類型

      2016/04/20

火山とは地表面下部にあるマグマが何らかの要因によって地表もしくは水中に噴出し、その作用によって形成される地形を一般的に火山という。このため、一口に火山と言っても、地表(水中)面の構造、マグマや地表の構成物質、あるいは気候などの要因によって色々な構造が存在する。

本項では現在の火山に関する学術研究において通常使用されている火山の分類を解説する。なお日本において教科書等で盛んに取り上げられたシュナイダー型の火山類型方法についても同様の形式である場合は併記する。なお現在シュナイダー型分類法は、形成過程を一切無視しているため現在の学術研究では一切使用されておらず、使用しないよう呼び掛けている。

 成層火山

Stratovolcano

 特徴

形状 円錐形が多く、頂上に向かうにつれ勾配が強くなる。比較的裾野が広い。

マグマの質 粘度は中程度。構造物質は玄武岩、安山岩等、マグマでみられる多くの物質を含む。

 形成過程

同一もしくは、非常に近接した火口から多数回の噴火によって、火口から溶岩、火山砕屑物、火砕流堆積物などが積み重なって徐々に山体が形成される。このため内部構造は複数の層に分かれていることになり、このことから「成層火山」の名がついている。シュナイダー型では「コニーデ」と称した。

 形成地域

比較的島弧地域や、沈み込み帯と呼ばれるプレートの境目で片方のプレートが他方のプレートの下へ沈む地域に発生しやすい。これは、成層火山の形成には爆発的な噴火と共に大量の火山から供給される堆積物が必要であるため、構造物質に多くの揮発性成分が含まれるこれらの地域に形成されやすいという特徴がある。

 寿命

他の火山に比べ比較的短く、日本のものは50万年程度と考えられている。これは、成層火山の形成物質が火砕流の堆積物など比較的崩れやすい物であることに加えて、形状が特に山頂に向かって急な傾斜であるため、崩落や侵食が進むのが早くその山容を保てている時間が短いためだろうと考えられている。

 代表的な山

富士山(日本)Mt_Fuji_ESC_large_ISS002_ISS002-E-6971_3060x2035[1]

エトナ山(イタリア)
イタリア、ヨーロッパにおいて最も有名な成層火山。史上何度も破滅的な被害をもたらした火山で、現在も最も活発に噴火を続ける火山の一つであるが、現地ではさほど危険視されていない。山容は火口が徐々に動いていることもありカルデラを形成するなど複雑になっている。Etna_eruption_seen_from_the_International_Space_Station[1]

キリマンジャロ(タンザニア)
世界で最も有名な成層火山の一つで、独立峰としては最も標高が高い。三峰に分かれている。kili88[1]

オホス・デル・サラード(チリ)
世界で最も標高の高いところに位置する成層火山。ojos-del-salado-2

スーフリエール・ヒルズ(英領モントセラト)
世界で最も活発な成層火山の一つで、97年の爆発の際は裾野に壊滅的な被害をもたらし、大量の火山灰によって首都プリマスが放棄された。main_1200[1]

セント・ヘレンズ山(アメリカ)
80年に大噴火があり、山体が大きく変容した典型的な例。MSH82_st_helens_spirit_lake_reflection_05-19-82[1]

マヨン山(フィリピン)
ルソン島南部にあるほぼ完全な円錐形の成層火山。インドネシアなどの東南アジア島嶼部には多数の山体の美しい成層火山が存在する。a57d4431[1]

 楯状火山

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 特徴

形状 なだらかな山容だが範囲が広大になることが多い。噴出孔を多く持つ。

マグマの質 粘度は低く、液体のように流れることもある。玄武岩質の含有率が高い。

 形成過程

玄武岩質の流動性の高い溶岩が数多くの噴火によって流出し、これが長期に渡って堆積するものである。比較的大型になることが多く、地球上の大型火山はこの形のものが多い。シュナイダー型分類では「アスピーテ」と称していたが、これには老齢期の成層火山が侵食されて楯状を形成するものも含んでいたため現在この語は一切使用されていない。

 形成地域

ホットスポットや海嶺上に存在するものが多い。これらの箇所ではマグマが玄武岩質を多く含むためで、最も典型的な例はハワイ群島である。

 寿命

非常に長いものが多く、数千万年前に形成されたものもある。日本のものでも100万年以上経過していると考えられている。

 代表的な山

八幡平(日本)
八幡平[1]

マウナ・ロア(アメリカ・ハワイ)
世界最大の楯状火山。また世界最大の火山でもあり、水中にある麓からの標高は9km以上にも達し、山頂部にはカルデラがある。ハワイ島にはキラウエアやマウナ・ケアなど世界的な楯状火山が複数存在するが、これらは全て別個の火山であると考えられている。現在の噴火活動は7~8000年前に始まったものと思われ、既に老齢期に入り始めていると考えられている。DSC00921_Mauna_Loa[1]

ヘインギットル(アイスランド)
温泉で有名な観光地となっている火山。現在も蒸気噴出などは多数起きているが、最後の噴火は2000年以上前と考えられている。hengill1

トルバチク山(ロシア・スカンジナビア)
トルバチクは急峻な峰となだらかな峰の二つの峰があり、それぞれが成層火山と楯状火山となっている複合型の火山である。
20131201171445b64[1]

クイーンメアリーズピーク(英領トリスタンダクーニャ)
世界で最も孤立した有人島と言われるトリスタンダクーニャ島は、ハワイと同様の形成過程からなる楯状火山。
Tristan_da_Cunha,_British_overseas_territory-20March2012[1]

オリンポス山(火星)
太陽系最高峰と考えられており、標高は27kmにも達する。また裾野部分は断崖絶壁になっており、その壁は5kmにも達する。
Olympus_Mons[1]

 溶岩台地

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 特徴

形状 非常になだらかな山容で且つ範囲が広大。現在は活動していない火山が多く、目視では火山と認識できることは少ない。

マグマの質 粘度は低く、液体のように流れることもある。玄武岩質の含有率が高い。

 形成過程

玄武岩質の流動性の高い溶岩が一度に大量に流出して広範囲に広がって台地を形成した物である。流出量によっては大変広大なものを形成することもあり、最大の物はインドのデカン高原で、これは日本の国土の1.4倍にも相当する。シュナイダー型分類では「ペジオニーテ」と称していた。

 形成地域

玄武岩質でハワイ式噴火を起こすタイプがなりやすいと言えるが、成因は様々で特定の地域には偏らない。

 寿命

楯状火山同様、非常に長いと考えられている。デカン高原は6700万年前に形成された。

 代表的な山

祖父岳・雲の平(日本) ※祖父岳山頂から雲の平を見る
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デカン高原(インド)
世界最大の溶岩台地。標高は300~400m。
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コロンビア川台地(アメリカ)
2000万~500万年前ころ非常に長期間に渡って大量のマグマが噴出したことによって形成された台地。
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プトラナ台地(ロシア)
2億5千万年前から形成が始まったと考えられている。シベリア中部にあって人を寄せ付けない。世界自然遺産。
プトラナ台地[1]

 マール/爆裂火口

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 特徴

形状 爆発時に火口のみ残ったもの。火口の周囲にほとんど火山性堆積物が堆積しておらず、山になっていない火山と考えればよい。日本では一般的に、マールは火口のみとなって水が溜まっているもの、爆裂火口は水が溜まっておらず、火山のどこにでも形成されていると分けられているが、海外では明確に分けられておらず、ほぼ同一の形成過程のものと考えて良い。

マグマの質 さまざまな形で形成され一定ではないが、マールを形成する場合は、水分を多く含んだ水蒸気爆発によって形成されることが多い。。

 形成過程

周囲の構造物を吹き飛ばす形に爆発的に発生した火口で、爆発の瞬間に発生する。上記の通り、水蒸気を多く含む場合や、火口部分が地下水脈よりも下に位置した場合はマールになりやすい。

 形成地域

特定の地域には偏らず、世界中に存在する。

 寿命

瞬間的に発生するものであるので、長いものも短いものもある。爆裂火口の場合、噴火を繰り返して最終的に堆積物が発生して火山砕屑丘になることもある。

 代表的なもの(山)

目潟(日本)mekata[1]

トーテンマール(ドイツ)
マールの語源になったドイツ・アイフェルにあるマール群の一つ。マールとはこの地方の言葉で湖を意味する。1920px-Dauner_Maare,_Weinfelder_Maar_oder_Totenmaar[1]

デビル・マウンテン・レイクス(アメリカ・アラスカ)
世界最大のマールと考えられている。大きな二つのマールを中心に複数のマールが点在している。 devil-mountain[1]

ホール・イン・ザ・グラウンド(アメリカ・オレゴン)
地上にできた典型的な爆裂火口。この周囲には同じく爆裂火口として有名なビッグ・ホールや、典型的なタフリングであるフォート・ロックなどの火山地形が点在する。
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ラム湖(イスラエル)
人間が最も古くから文明を築いた地域にあるマールで周辺からは古代の遺跡が多数発掘されている。
Brechat_ram_mt_hermon

地獄谷(日本・北海道)
日本での爆裂火口の典型例。jigoku
米丸(日本・鹿児島)
典型的なマールの例。薩摩半島にはこれ以外にも池田湖、鰻池、山川湾と非常に有名なマールがあり、これらはランクCの活火山に指定されている。
Yonemaru_Kagoshima_Japan[1]

 火山砕屑丘

cindercone

 特徴・形成過程

形状 主に爆発や、マグマの質によって三種ある。
スコリア丘(シンダーコーン) 砕屑物のうち、玄武岩質のスコリアが堆積してできた丘状の地形。しばしば円錐状を描き、頂上部が馬蹄型になっていることもある。
軽石丘  砕屑物のうち、軽石が主となって堆積した丘状の地形。粘度が低いため爆発の力が大きく、スコリア丘よりも大きな火口となる。
凝灰岩丘(タフリング、タフコーン) 水蒸気爆発によってできた比較的大型の火口からなり、爆発力が高く火口周囲のみに堆積がみられ比較的低いものをタフリング、爆発力が低く丘状をなしているものをタフコーンと呼ぶ。
なおシュナイダー型分類では、火山砕屑丘のうち丘状のものの多くを「ホマーテ」と称していたが、この名称は一切使われていない。

 形成地域

マールと同様特定の地域には偏らず、世界中に存在する。火山や火山群の中の一部の地形としてできやすいが単独で発生する場合もあり、広義に言えば成層火山もこれらの地形が年齢を重ねて形成されたものであることが多い。

 寿命

瞬間的に発生するものであるので、長いものも短いものもある。

 代表的なもの(山)

スコリア丘

大室山(日本)oomuro1[1]

ウィザード・アイランド(アメリカ・オレゴン)
オレゴン州のクレーター・レイクにある観光地として非常に有名なスコリア丘。7000年前におきた大噴火によってできたカルデラ湖の中にある。
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マウンガレイ(ニュージーランド)
オークランド火山帯に位置するスコリア丘。街中にポツンとあるように見える単独の砕屑丘。MtWellington.1[1]

プウ・オオ(アメリカ・ハワイ)
キラウェアにある現在形成中のスコリア丘。多くの研究家が訪れる。Puu_Oo_cropped[1]

西ノ島(日本・小笠原諸島)
プウ・オオ同様に最近年で形成され始めた代表例。2016年初頭で、既に阿蘇山米塚とほぼ同程度のスコリア丘が完成している。photo003_20150427_105015TS[1]
軽石丘
 草千里・阿蘇(日本)
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セントラル・プミス・コーン(アメリカ・オレゴン)
ニューベリー山のカルデラ湖に挟まれた位置にある典型的な軽石丘。オレゴンには多様な火山地形が存在する。central_pumice_cone[1]
サン・ベネディクト島(メキシコ)
1952~3年の噴火によって主に形成された軽石丘。
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ボラ・ベリッチオ(エチオピア)
内陸部の火山帯にある双子火山の一つが軽石丘を形成している。Bora-Bericcio

 タフ・コーン
ココ・ヘッド(アメリカ・ハワイ)
オアフ島にある典型的なタフ・コーンの例。
Oahu_from_air2

ダーウィン島火山群の複数タフコーン(エクアドル・ガラパゴス諸島)
タフコーンが複数形成されている様子を捉えた有名な衛星写真。
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ハーラト・フタミーヤ(サウジアラビア)
内陸部にあるタフコーンの例。H_Hutaymah

タフ・リング
ダイアモンド・ヘッド(アメリカ・ハワイ)
オアフ島にある典型的なタフ・リングの例。1280px-Starr_070402-6230_Prosopis_pallida[1]

城山日出峰(韓国・済州島)
典型的なタフ・リング。タフ・コーンと考える場合もある。Seongsan_Ilchulbong_Peak_dari_atas

フォート・ロック(アメリカ・オレゴン)
最も有名なタフ・リングの例。ホール・イン・ザ・グラウンドの近辺にある。
IMG_2133s[1]

パヌム・クレーター(アメリカ・カリフォルニア)
モノ・イニョクレーター群の一つにある火口。内部に溶岩ドームが残る珍しい形のタフ・リング。
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 溶岩円頂丘

LavaDomeTypes[1]

 特徴

形状 地中の溶岩が盛り上がる形で形成されるためドーム状になることが多い。細かく見れば円頂状のものや釣鐘状のもの、岩尖状(火山岩尖と言われる)のものがあり、これらをシュナイダー型分類では「トロイデ」「ベロニーテ」などと称していた。また、円頂丘になりそこねた潜在円頂丘とよばれるものも存在する。
マグマの質 どのような質のものでも形成されるが、寿命の長いものでは流紋岩や安山岩質のものが多く、シリカを含むデイサイトや流紋岩質の場合かなり長期に渡って残存する場合がある。

 形成過程

地中のマグマが地上に湧き出て、多くの場合その粘性によって山体外に流出することが少なくなった場合に盛り上がりを継続することによって形成される。数日~数か月程度で急激に形成される場合もあれば、玄武岩質の物の場合はかなり長期に渡って形成を継続する場合があり、長期に渡る場合はそのまま成層火山になることもある。

 形成地域

砕屑丘と同様に火山地形のどこにでも発生する可能性がある。特に活動中の成層火山の多くに形成されているものが多い。

 寿命

構造的に脆い物質であることが多く、数年から数十年程度しか持たないものも多い。玄武岩質の海上でできたものなどは数日ももたないものもある。一方、活動を続けて1000万~2000万年経過しているものも存在する。

 代表的な山

昭和新山(日本・北海道)hoku-usu-pic004[1]
ラッセン山(アメリカ・カリフォルニア)
世界最大の溶岩ドーム。20000年前頃から形成が始まっている。1915年に大型の噴火が有り付近に大きな被害をもたらし、現在はその区域が国立公園に指定されている。USA_Lassen_Peak_CA[1]

ムラピ山(インドネシア)
成層火山をなしており、山頂部が大型の溶岩ドームとなっている。安山岩でできた溶岩ドームが崩落を起こすと頻繁に火砕流が発生し、ムラピ型火砕流と呼ばれるが、この火砕流の典型例が雲仙普賢岳で起きた91年の火砕流である。
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ピュイ・ド・ドーム(フランス)
1万1千年前のマグマ隆起によって形成された溶岩ドーム。この麓から取れる天然水がヴォルヴィック。Puy_de_Dome_4[1]

プレー山・プレー岩尖(アルゼンチン)
1902年に起きた壊滅的な破壊をもたらした大噴火によって急激に成長した典型的な火山岩尖。半年ほどで不安定となり崩壊した。
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「黒牙(ブラックタスク)」(カナダ・ブリティッシュコロンビア)
17万年前に発生した頂上部の溶岩ドームが、中央の比較的硬い岩を残して侵食されてできた岩尖だろうと考えられている。
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 カルデラ

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 特徴

形状 基本的に円形状の大型の火口跡で直径1マイル以上のものを総称的に「カルデラ」と称する。多くの場合、中央部は窪みとなっていて、盆地をなしていたり、湖や湾状の海を形成していたりする。また周囲が外輪山を取り囲むことが多いが、この限りでは無い。内部には複数の火口やスコリア丘、溶岩ドームなどの火山地形を残していることが多い。

 形成過程

大型のカルデラは超大型の爆発によって1回~数回で形成されていると考えられている。

 寿命

古いものが多く、形成から数百万年から数十万年近く経過しているものも存在する。

 代表的な山

阿蘇(日本)
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サントリーニ島(ギリシャ)
有名な世界遺産の観光地は、カルデラの外輪山である島にある。

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タール湖(フィリピン・ルソン島)
典型的な二重カルデラ湖の例。vulcan_point_island_05[1]

ンゴロンゴロ・クレーター(タンザニア)
数百万年前に発生した大噴火によって形成され、これによってできた外輪山のために外界との接触が断たれたため内部に独自の生態系が残ることになった。
Ngorongoro-Crater-tanzania[1]

以上

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