ダンテ・アリギエーリ「神曲」に登場する世界3:天国篇
煉獄山頂上からベアトリーチェの導きによって、ダンテは天国へ向けて昇っていく。
ダンテが神曲で描いた天国はプトレマイオスの想像した天動説に基づいた宇宙観を踏襲しており、最も最上部に神の領域である至高天が存在していると考えている。ダンテはベアトリーチェに導かれて煉獄山を上へ登ったように、天界も順に上へ昇っていくことになる。
概要
天国篇
火焔天
ダンテは驚きながらもベアトリーチェと共に空を飛び、その途中で火焔天を見る。ここは地上で発生した炎が還る場所だった。
第一天 月天
最初の天界である月天へ到達する。ここは神への請願が満たしきれなかった者たちが来る場所だった。ここでダンテは煉獄山第七の環で会った友人フォレーゼの妹ピカルダと出会う。
第二天 水星天
第二天は徳を積んだものの、それは自身の現世世界での名声を得ようとしたためだった者たちが来る場所。東ローマ皇帝ユスティニアヌスからローマの歴史を詳らかに聞く。
第三天 金星天
第三天は生前、愛の虜となったものがいる場所だった。ここにフランク王国宮宰カール・マルテルがいた。
第四天 太陽天
ここは賢者が集まる天界である。「神学大全」を著した13世紀半ばのシチリアの神学者で中世の代表的な哲学者であるトマス・アクィナスがいた。
そして古代イスラエルの王で、キリスト教徒からも評価の分かれるソロモン王がここにいた。
第五天 火星天
キリスト教を守護する為に戦って死んだ者たちがいた。ここにはダンテの祖先で皇帝親衛隊だったカッチャクイダがいた。
第六天 木星天
現世で正義を成した者たちが集う場所。天使たちが環になって愛と正義を意味する文字を描く。
彼らはシャルル・ダンジューやフェデリコ二世などダンテが生きた時代に争いを起こした者たちを暗に批判した後、ダヴィデ王やトラヤヌス帝、コンスタンティヌス帝を称えた。
第七天 土星天
ひたすら信仰とともに生活をしてきた清廉な魂が集う場所。ベアトリーチェは祝福を受ける。
聖ベネディクトや聖ペトルス・ダミアニと対話する。下を見下ろすと地球が遥か下に位置していた。
第八天 恒星天
数多くの恒星が輝き、下の七つの遊星を内包し、十二宮の置かれる天。
ここには聖ペテロ、聖ヨハネ、聖ヤコブやアダムがいた。ダンテは彼らから試問を受ける。
第九天 原動天
下の八つの天を全て内包し、これらを動かす全ての源となる。九つの環が回り、それぞれ九階級に分かれた天使たちが下の天を統べる。
九つの天使とは即ち、セラフィム、ケルビム、 ソロネ、キュリオテテス、 デュナメス、エクスシアイ、アルヒャイ、アルカンゲルス、アンゲロスの九大天使の事である。
第十天 至高天
原動天の上に昇ると、ベアトリーチェは祝福されてバラの花の形となった天使に祝福されて消えた。
ベアトリーチェに代わって現れたのは、クレルヴォーの聖ベルナールだった。自身を聖母マリアの帰依者だと伝え、ダンテを連れ添って天の女王である聖母マリアを見る。その傍にはベアトリーチェがおり、イブが跪き、ラケル、サラ、レベカ、ユディス、ルスの七人の女性と、その対面に聖ヨハネ、聖フランシス、聖ベネディクトゥス、聖アウグスティヌスがいた。
聖ベルナールは聖母マリアにダンテに慈悲を頂けるよう懇願する。ベアトリーチェも同じように祈る。マリアがダンテを見た瞬間、ダンテに光が広がり、この後のことをはっきりとダンテは記憶することができていない。しかし、その刹那にダンテは希望の果てを見た。ダンテは全ての希望は神の愛であることを悟り見神の域に達したのだった。自分の意志が神の意志と調和することが、自身の目的であったことを悟りこの物語は終わる。
以上